工場建物登記・工場立地法コンサルタント

お問い合わせ

BLOG

緑地として認められるのはどこまで?〜人工芝・自然林・水田などの取扱い〜

こんにちは!

今回は、工場立地法における「緑地として認められるもの、認められないもの」について整理していきます。
見た目が緑でも、すべてが「緑地」として算入できるわけではありません。
人工芝・自然林・コケ・水田など、それぞれの扱いを正しく理解しておくことで、誤った面積算定や届出ミスを防ぐことができます。

◆ 緑地の定義

まず、工場立地法における「緑地」とは、どのような場所を指すのでしょうか? 法施行規則第3条には以下のように書かれています。

第三条
法第四条第一項第一号の緑地は、次の各号に掲げる土地又は施設(建築物その他の施設(以下「建築物等施設」という。)に設けられるものであつて、当該建築物等施設の屋上その他の屋外に設けられるものに限る。以下「建築物屋上等緑化施設」という。)とする。
一 樹木が生育する区画された土地又は建築物屋上等緑化施設であつて、工場又は事業場の周辺の地域の生活環境の保持に寄与するもの
二 低木又は芝その他の地被植物(除草等の手入れがなされているものに限る。)で表面が被われている土地又は建築物屋上等緑化施設

もう少し簡単に説明すると、
🔵工場等の用に供する敷地内に区画された土地または建築物屋上等の緑化施設であること
🔵樹木が生育する土地については、その区画全体に平均的に植栽がなされていること
🔵緑地の植栽工事は、原則として届出に係る生産施設の運転開始時までに完了していること

つまり、「ちょっとだけ木や草が生えているところ」ではなく、工場周辺の生活環境の保持に寄与するよう、計画的に植栽・管理されたエリアが「緑地」として扱われます。

敷地の端っこに少し木や草が生えている場所があるんですが、それも緑地に入れていいの?

avatar

工場管理者たろう

avatar

はちろう

ポイントは「計画的に植栽されていて、全体として平均的に緑が確保されているかどうか」なんだ。たまたま草木が生えているだけだと、緑地としては扱いにくいね。以前、用語解説の回で緑地と環境施設について説明しているから、このBLOGを最初に見てもらえるとわかりやすいよ!

 

◆ 人工芝は緑地に含まれない

まず、よく聞かれるのが人工芝の扱いです。

人工芝は人工物であり、植物が生育しているわけではないため緑地には該当しません。
見た目がいくら緑でも、「自然の植栽による環境の保全」という趣旨から外れてしまうため、緑地面積に算入することはできないと整理されています。

 

◆ 自然林・原生林は“管理されていれば”緑地

次に、敷地内に自然林や原生林が残っているケースです。

自然林・原生林であっても、工場側が整枝・剪定などの手入れを行い、周辺の生活環境の保持に寄与するよう適切に管理している場合には、緑地としてみなすことができます。
逆に言うと、全く手入れされていない「放置された森」のような状態では、緑地として評価されにくくなります。

うちの工場には昔からある林が敷地の一部に残っているんだけど、それも緑地に含められるかな?

avatar

工場管理者たろう

avatar

はちろう

定期的に整枝・剪定をして、周辺の景観や生活環境に配慮して管理しているなら、緑地として評価できる可能性が高いよ。逆に、全く手入れしていない単なる山林だと緑地と認められないリスクがあるね。

 

ここで大事なのは、「自然林だからOK/NG」ではなく、工場側が意図的に管理しているかどうかです。
周辺住民の生活環境の保持に寄与するように整備されていれば、自然林・原生林も立派な緑地になり得ます。

 

◆ コケ(苔)は「容易に移設できない」「管理されている」ことが条件

苔(コケ)を利用した庭や花壇を計画している工場もありますが、苔がそのまま緑地に該当するとは限りません。

緑地は、「容易に移設できないもの」に限定されています。
このため、イベント用の装飾としてマット状のコケを一時的に敷いただけのようなケースは、緑地には含めることができません。

一方で、地面に定着させて植栽し、継続的に手入れ・管理を行うのであれば、緑地と認められる余地があります。

苔を一面に敷き詰めた「コケ庭」をつくろうと思っているんだけど、これなら緑地にできるよね!?

avatar

工場管理者たろう

avatar

はちろう

地面と一体になっていて、簡単に移動できない状態で継続的に手入れをしていく前提なら緑地として扱える可能性はあるよ。ただ、「マットを敷いただけ」のような状態だと緑地とは見なされにくいから注意してね。

 

苔を緑地に含めるかどうかは、
🔵植栽として地面に定着しているか
🔵継続的に管理される前提になっているか
といった点を踏まえて判断されます。

実際に面積算定に含める際は、事前に自治体と相談しておくと安心です。

 

◆ 水田は「緑地」ではなく「環境施設」として考える

工場敷地内に水田や畑を有しているケースもありますが、これらは基本的に「緑地」には該当しません。

水田は季節によって水張り・稲刈りなどがあり、年間を通して常に緑があるわけではないため、「緑地」として位置付けるのは難しいとされています。
同様に、野菜畑などの農地も「生産を目的とした土地」であり、緑地とは区別されます。
一方で、水田や畑が工場周辺の景観や地域の環境に寄与していることも事実です。
そのため、これらは「工場又は事業場の周辺の地域の生活環境の保持に寄与するもの」として、緑地以外の「環境施設」として位置付けることができます。

敷地の一角に水田があるんですが、それも緑地面積に入れられませんか?

avatar

工場管理者たろう

avatar

はちろう

水田は季節によってはほぼ裸地になるから、「常時緑がある緑地」として扱うのは難しいんだ。でも、地域の景観に貢献しているなら、緑地以外の「環境施設」としてカウントする方向で考えられるよ。

 

このように、「緑地」としてはカウントできないが、「環境施設」として評価できる土地も存在します。
緑地率と環境施設率の両方の観点から、位置付けを整理することが大切です。

 

◆ まとめ

✅「緑地」とは、区画された土地や屋上緑化等で、全体として平均的に植栽され、適切に管理されているものをいう。
✅人工芝は人工物であり、緑地には該当しない。
✅自然林・原生林は「放置された森」ではなく、整枝・剪定などの管理がされていれば緑地に算入可能
✅苔は、地面と一体になって定着し、継続的に管理される場合に限り緑地として算入される余地がある。
✅水田や畑などの農地は緑地には該当しない。
ただし、「生活環境の保持に寄与するもの」として環境施設に算入することができる。

 

📌 次回予告

次回は、今回の続きで「緑地の範囲はどこまで?調整池・軒下・山林の扱いを整理」というテーマで、「ここは緑地に入れてよいのか?」迷いやすいケースを整理していきます。